宿命<「よど号」亡命者たちの秘密工作>

高沢皓司著 新潮社
相変わらず赤軍関係(ぼちぼちと)追っかけてるんだけど、今度は「よど号」。
よど号」の犯人たちのその後の北朝鮮における行動の実態を描いたドキュメンタリー。筆者は犯人の田宮高麿の昔の友人。主体思想教育や彼らの北朝鮮での動きや思惑などが語られてて、北朝鮮理解にも役に立つ。ヨーロッパでの邦人誘拐やいろいろなことがあって面白いのだけど、いちばん気になったのは、学生運動赤軍の栄光と挫折のような話で、団塊世代の挫折感がにじみ出てて面白い。団塊世代があれほど国を変えようとして運動してたのは何か。そしてその運動してた人があっと言う間に社会の一員になって会社員とかで頑張って社畜と化して行ったのかということは、こうした赤軍の鏡に写った像だよなと思う。
団塊とは何か。日本の社会とは一体どういうものなのか。日本における思想とは一体なんなのだ?とかいろいろ考えてしまいました。
ことは北朝鮮の話なんだけど、それは日本でも同じようにある種の挫折と社会構造にくみこまれてゆくという過程は存在してるし、そういった部分を取り除いて、しょせん「北朝鮮の他人事、おお、怖い怖い」という風に読むのではなくて、逆に「日本ではこの反対の思考や逡巡の結果、こういう(ああいう)感じになったんだろうな」と読んだ。
ドキュメンタリーとしても凄く面白い。

丁度今日、実行犯の妻のニュースがあったな。
http://www.asahi.com/national/update/0826/013.html