オウムをやめた私たち

オウムをやめた私たち

カナリヤの会編 岩波書店
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4000223658/qid%3D1093880792/249-6160906-0460367

オウム関連をたまにぼちぼちと読んでます。別に関係者でもありません。
帰宅途中に電車が事故かなんかで止まって、大手町で待つのだるいから東京駅まで歩きました。で、ぶらっと入った本屋で発見。

オウム脱会者たちの話を纏めた本で、脱会者たちの「カナリアの会」というのがあって、その会員たちの話です。なぜ入信したか、なぜやめたか、今(発行は2000年)なにを考えてるのか、ということが纏められてました。
脱会者たちのインタビューとして大きなものは村上春樹の「アンダーグラウンド」が大きいのですが、あっちはすごく硬い調子で進むのに比べて、この本はずっと分かりやすく生に近い声が聞こえる本でした。最近はネット関係に元オウムの人のサイトが消えて、段々情報が入りにくい状況になって来たので、このような本は貴重な資料になるんだろうなあと思ったりします。
実際の現場では彼らはなにを思っていたのか、なにを考えていたのかという話はとても興味深い話だし、カルト、もしくは逆に現代社会における人間のことを考えるのにも一助となるかなと思ったりします。彼らの葛藤や逡巡や悩みは今の社会に対してどのような形で反映されているか(現実社会の反映がオウムだと考えると)、それは、案外他人事では済まされない話なんだろうなと思ったりします。読んで、ゆっくり考えたい内容がいろいろとありとても面白く読めました。
最後に用語集があって、そこで気がついたんだけど、中島みゆきの「空と君のあいだに」って曲は、オウム脱会を促すために滝本弁護士たちが作った「集団自殺・虐殺防止テープ」の中に挿入されてたそうだ。オウム報道の中で何度も上九一色村の施設の外から流されてたそうなので、案外、「地上の星」が流行ったのは、おじさんたちの深層意識に中島みゆきが残ってたからなのかも知れないと思った。というのは、あの曲を支持したおじさんたちは団塊の世代だから。この中島みゆきの符号はとても興味深いのではないかと思う。
なぜならオウムと団塊の世代というのは鏡の両面のように呼応してると僕は思ってて、キーワードはアナーキズム団塊アナーキズムが頂点に至った存在が赤軍で、団塊ジュニアの頂点がオウムだと仮定することはできまいか?両者とも、中島みゆきの歌が流されるのは、挫折という時期なのだというのも面白いし、もしかするとオウムの挫折に団塊の世代赤軍の挫折の既視感を覚えたのではあるまいかとも思ってしまう。考えすぎだろう。きっと。